新空港線(蒲蒲線)は実現可能なのか?


新空港線(蒲蒲線)計画とは、JR蒲田駅と京急蒲田駅は約800m離れており、現在乗り換えるためには、歩くか路線バスに乗るかの方法しかありません。この800mをJR蒲田駅から東急多摩川線を延伸させて京急蒲田駅と結び、将来は羽田空港まで乗り入れさせようとの計画です。これだけ見れば「便利になるのなら良いじゃないか」と思われる方もいらっしゃると思います。ところが、そう単純に行かないいくつかの問題点があります。
1つ目、将来は京急空港線の糀谷駅と大鳥居駅との中間で乗り入れするとの予定ですが、そもそも京急と東急は電車の軌道幅が異なります。フリーゲージシステム(幅を可変できる機構)を採用するとしていますがまだ実験段階で、どれだけの車両改修費用を必要とするかは未知数です。そもそも実用化できるの?東急が全車両の改修費用の負担をするの?
2つ目、京急空港線及び東急多摩川線沿線の住民は便利にはなりません。東急多摩川線の駅舎は3両編成しか止まれないホームの長さしかありません。「埼玉方面から空港へお客を運ぶ計画」と言っているのですから、当然8両編成が当たり前です。他路線との時間競争もあり、多くの大田区内駅は飛ばされるのが確実です。さらに急行を通すため各駅停車車両はどこかで待っていなければなりませんが、駅舎周辺にそのスペースの確保することも困難です。そんな都合の良い空き地はありません。下丸子駅を地下、もしくは高架にすると言い出し始めましたが・・・。
3つ目、JR東日本の「羽田空港アクセス線」が事業認可を受け2029年度に開業されます。廃線された貨物引き込み線を使用するためこちらは整備が容易です。東京駅から約18分で結ばれ埼玉からは高崎線や東北本線、千葉からは埼京線とりんかい線が乗り入れる予定で明らかに利便性などで優位に立っています。現在ある東京モノレール、京急線とも競合し池袋から1時間近くもトコトコかかる新空港線(蒲蒲線)ではとても採算が取れないのではと見込まれています。
4つ目、「京急」蒲田駅に「東急」は乗り入れできません。違う鉄道会社の名前のついた駅には止まれない。(鉄道会社の意地なのかなんなのか)いまのところ京急蒲田駅近くの地下でつなげ「南蒲田駅」とする予定です。結局、乗り換えるには地下道を歩かなくてはなりません。そもそも、自分(京急)のお客さんを奪っていく計画に、よほどの破格の補償がなければ京急が協力的になるはずがありません。
5つ目、この無謀な計画に大田区が積極的に事業参入しようとしている点です。この路線がドル箱路線になることが確実なら東急単独で事業をやりたがるはずです。しかし現在、運営主体は大田区との共同出資の第3セクター方式になることが濃厚で、赤字路線となれば区民の大切な税金が毎年補填されることになります。建設費は1期工事だけで1260億円との試算が出され、最大で大田区が2/3の830億円も支出しなければならない可能性もあります。しかも、この1260億円の試算根拠も明確に出されていません。消費税増税前に出された試算なのに増税後も変化なし。日本共産党の質問で区担当者は「消費税増税を見込んで試算した」と、まるで預言者であるかの様な答弁でした。採算が十分に取れる見込みがあり、確実性の高い計画であれば堂々と区民に公開し、是非を問うべきです。
最近では、大田区は新空港線(蒲蒲線)計画単体で推し進めることに無理があると思ったのか、蒲田駅東口の駅ビル再開発とセットで、この事業として進めようとしています。コロナ禍の下で航空機需要は数年、回復の見通しが立たず、その間に遠隔地とはオンラインでのビジネスモデルが完成してしまうでしょう。格安な観光目的ならばLCCが就航している成田空港が選択されるでしょう。海外ビジネス客をターゲットにした戦略では今後益々、羽田空港へのアクセス採算の見込みは立ちません。
問題だらけで区民からも批判の声が出されているにも関わらず、この計画準備基金として年間10億円づつ、現在80億円も区民の税金を積み立てしています。コロナ禍で区民の生活と営業はひっ迫しています。この無謀な大型開発はきっぱりと中止し、区民の命とくらし重視の区政に転換していくことを求めていきます。