「80・50」問題を考える


「80・50」問題と呼ばれている社会現象をご存じでしょうか。80、50は年齢です。50歳とはちょうど私の年齢世代ですが、私たちの世代は第2次ベビーブームで人口が多いことも特徴で、バブル崩壊後、就職難の時代でもありました。10~20社受けても就職ができない。アルバイトや導入された派遣社員制度が「自由な働き方・新しい働き方」ともてはやされたのもこの時代です。フリーターなんて言葉ができたのもこの頃だったと思います。とにかく働かないと生きていけないのは当たり前です。「1~2年アルバイトをしてその間に就職先をさがそう」と思っても新卒枠はいっぱいで、中途採用枠にはアルバイト経験では入れない。挫折を感じてそのまま引きこもってしまう。
親の世代が現役の時はまだ余裕がありましたが、その後退職し、年金のみで子どもと暮らす状態で、生活が行き詰まり悲惨な事件も発生してしまっています。
この問題は新型コロナ感染症により、さらに深刻化していると感じます。状況は異なりますが私も3件同じような相談に乗りました。
共通項があります。相談者は80歳前後のお母さんです。そして相談内容は「50歳前後の息子さんがコロナ禍で職がなくなり、離婚してから生活が荒れていること」です。お母さんたちは周りには相談できず、「どうしたら良いのだろうか」と私の事務所へ相談に来られます。
私も息子さんたちと同じ年代ですから気持ちが分かります。お母さんには私たちの世代がどういう時代を過ごして来たのかをお話しします。
おじいさんや親御さんに「うちのはまだ正社員になれないんだ」と知り合いに話している姿を見て「半人前扱いをされて傷ついた」など同級生の友人から聞いたこともあります。
「とにかく息子さんの話を否定せずに良く聞いてください。そして決して追い詰めないでください。大丈夫だと安心させてください」と話しています。
活用できる窓口や制度などご紹介はしますが、息子さんご本人が相談しようと思わなければどうにもできません。
電話で息子さんとお話しをすると、多くは「自己責任」論にさらされて生きて来た世代です。まず「ごめんなさい」との言葉が出てきます。「謝らないでください」から相談が始まります。
時代のせいだとは思えません。大手メディアをフル活用し非正規雇用を増やし、自己責任論を蔓延させてきた政治の責任は重いです。この状況が続けばもっと悲惨な事件が増えます。
今は、みんなが希望を持って生きていける施策を緊急的に行うこと。しっかりとした補償などを拡充させること。「失敗しても大丈夫、公助に頼ることは決して恥ずかしいことではない」と啓蒙活動も両面で必要なことだと思います。